過去の詩のページ(A〜Bまで)

 

・過去の詩B(08/10更新)


 夢を抱きし兄弟達よ  お前は一人ではない  たとえ現実に打ちのめされ  今は泣きながら眠ったとしても  立ち上がれ! 兄弟達よ!  そうだ、お前は一人ではない!  希望を抱きし兄弟達よ  我らは一人ではない  たとえ幾夜も続く不安と孤独に  押し潰されそうになったとしても  立ち上がれ! 兄弟達よ!  そうだ、我らは一人ではない!  立ち上がれ、我が兄弟!  夢見ることを諦めるな!  その希望を手放すな!  お前は一人ではない!  そうだ、我らは一人ではない!

 (多崎礼「〈本の姫〉は謳う・3」より)

 

・過去の詩A(08/04更新)

 

むかしトゥーレに王がいた こよなく愛する人がいた いとしの人は死にぎわに 黄金の杯を王にのこした   王に死が近づいた 国の都を数えあげ すべてを息子にゆずったが 黄金の杯は手元にのこした   老いた王はすっくと立って 最後の酒を飲みほした それから杯を高だかと かなたの海に投げやった

いつも変わらぬ王だった うたげのたびに杯をもつ 飲みほすたびにうっすらと 目には涙がにじんでいた   海にのぞんだ城だった 大きな広間に王がいた 最後の宴に騎士たちが ひとり残らず馳せ参じた       杯は落ち 海に沈んだ 王は目を閉じ 二度と飲まない      

(ゲーテ「ファウスト」マルガレーテの歌より)

 

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